2013年5月4日土曜日

麻布七不思議-柳の井戸

麻布山善福寺参道の柳の井戸と「うなり柳」
善福寺惣門を入って参道右手にある井戸。境内の「逆さいちょう」と共に麻布七不思議の一つにも数えられています。
柳の井戸は正式には「楊柳水」といい、井戸の脇には「楊柳水銘」と書かれた石碑がある。この石碑は明和二(1765)年に建てられたようで、江戸名所図会によると弘法大師が常陸の鹿島明神に願って得た阿伽井(あかい)であるということで「鹿島清水」ともいわれる。碑文の最後には「葛辰書」とあるのでおそらく麻布東町生まれで服部南郭に学んだ、あの松下君岳(烏石)の揮毫と思われます。

楊柳水銘
毖彼石泉
盈科而流
空海所呪
其霊永留
阿那楊柳
水中影浮
飲者治疾
徳潤千秋
明和二年乙酉歳中秋前一日
藤公縄義篆
藤定福銘
葛辰書

麻布山善福寺 柳の井

ま「柳」とは、井戸の横に「うなり柳」とも呼ばれる柳の木があるため。 「続江戸砂子」は、「うなり柳」について、
麻布山善福寺。西派、寺領十石、雑色町。うなり柳。古木はかれて若木也と云。清水のかたはらの柳といへり。来歴しれす。
としており、江戸名所図会では、
鹿島の清水。総門と中門との間いあり。往古弘法大師常陸国鹿島明神に乞得給いひし阿伽井なりと。又土人云く。鹿島の地に七井と称する霊泉あれども其一つは空水といへり。昔は其側に柳樹ありしかば。一名を楊柳水とも唱へ侍ると云々。此柳をうなりやなぎという由。来歴詳ならず。
とあります。

弘法大師が、鹿島大明神に祈願して手に持った杖を突き立てたところ、たちまち湧き出したと言われる井戸で常陸の鹿島神社にある七つの井戸は、一つをここによこしたため、空井戸になっているといわれています。 
関東大震災や昭和20年4月、5月の空襲時にはこの井戸が多くの人に水を与えましたが、現在は保健所の指導によりそのまま飲むことは出来ないそうです。


柳の井戸 説明板

★説明板
柳の井戸

自然に地下から湧き出る清水である。
東京の市街地ではこのような泉が比較的少ないためか、
古くから有名で、弘法大師が鹿島の神に祈願をこめ、手
に持っていた錫杖を地面に突きたてたところ、たちまち
噴出したものだとか、ある聖人が柳の枝を用いて堀った
ものであるとか、信仰的な伝説が語りつがれてきた。
とくに現在のわれわれとしては、大正十二年の関東大
震災や昭和二十年の空襲による大火災の際に、この良質
な水がどれほど一般区民の困苦を救ったかを心にとどめ、
保存と利用にいっそうの関心をはらうべきものと思われ
る。

昭和四十九年1月

東京都港区教育委員会

楊柳水 湧水
楊柳水 湧水

























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           ★追記:湧水が味わえる場所
 現在この井戸の水はそのままでは飲むことが出来ませんが、この水と同じく武蔵野台地を流れてきた湧水を味わうことが出来る場所があります。それは、麻布山善福寺からもほど近い、仙台坂下にあるCAFE KARIZさんです。このカフェの地下に湧水井戸があり、床の一角をガラス張りにした店内からもその湧水を確認することが出来ます。さらにその湧水を加熱せずNASAが開発した特殊な浸透膜で濾過したまるやかな湧水で入れたコーヒーが味わえます。また店で出される水もこの湧水が提供されています。




CAFE KARIZ








CAFE KARIZ
地下の湧水井戸







CAFE KARIZ
店内